嘘か本当かは定かではありませんが、巷では世紀末ブームが来るとかこないとか。21世紀を迎えてまだそれほど経っていないというのに、それほど希望の持てない世の中なのか。そんなとき、まったくの偶然に、以前の同僚と当時の社長にすすめられて「人類滅亡」が要素として盛り込まれている漫画を読むことに。それは、浦沢直樹の『20世紀少年』。今年の夏には実写映画 (http://www.20thboys.com/) が公開される*1という人気漫画ですが、1960年生まれの少年 (〜おとな)*2 が主人公で、昭和の香り漂うシーンから20世紀末に起きたいくつかの痛ましい事件がフラッシュバックするストーリーへの展開、さらにはちょっとだけ未来の話 (2010年代) となるクライマックスへと時代を行き来する物語は、同じ60年代生まれの私にとって同時代的な時間感覚を持って楽しめました。8年もの長期間にわたって連載*3されていたこともあり、多少間延びした展開を見せる部分も何度かあったし、後半に行けば行くほど荒唐無稽さが強まっていきますが、総じてまずまず面白い作品だと思っています。
少年時代たいていの男子が経験する「秘密基地」での遊び、どこにでもある「幽霊屋敷話」、いじめっ子といじめられっ子、存在感のない同級生、、、といった、リアルな小道具と設定を絡めながら、「人類滅亡」という世紀末思想を自ら無理やり現実のものとし本気で世界征服を狙う謎の人物 "ともだち" をめぐる物語は、昭和と平成をまたいで生きている私たちに心地よく、ときには逆に気分の悪いリアリティーと共感を覚えさせます。この作品を映画化するにあたって実写を選んだことが良かったのかどうかはできあがりを観るまではわかりませんが、映画向けの漫画であることは間違いないです。
「面白い」と上で書きましたが、これは、エンターテイメントととしての意味です。そこには物語を通じた強いメッセージのようなものはありません。ただ、これはこれでいいのだと思っています。世紀末思想や行き過ぎた価値観への作者の憤りのようなものを随所にちりばめつつも、それはメッセージというほどのものではなく、ただただ、『20世紀少年』は壮大なる作り話(それをひとは「浦沢ワールド」と呼ぶのか?)であり、私が「映画はこうでなくっちゃ!」とする要素を備えるザ・エンターテイメントなのです。荒唐無稽さを「だってこれ、作り物でしょ」と素直に受け入れ、純粋に目の前のものを楽しめる方に、ぜひおすすめしたい作品です。
20世紀少年―本格科学冒険漫画 (1) (ビッグコミックス)
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21世紀少年 上―本格科学冒険漫画 “ともだち”の死 (ビッグコミックス)
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